店主インタビュー

新宿つけ麺の銘店「風雲児」 独占インタビュー


新宿駅南口から徒歩5分ほどにある、つけ麺で有名なラーメン店「風雲児」。店内のお客様の7割程が女性ということもあるほど、老若男女問わず人気のあるお店。濃厚ながら臭みのない魚介鶏白湯スープが特徴。食べログレビュー件数1000件以上という、日本屈指の人気店となっています。  2007年の創業から8年。途切れることのない行列を作り続ける「風雲児」の三宅重行店主に、行列の秘訣をお伺いしてきました。

2015年04月22日 更新
新宿つけ麺の銘店「風雲児」 独占インタビュー - サムネイル
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風雲児


店主プロフィール



三宅 重行 店主

愛媛県生まれ。スカウトによる芸能界での仕事に始まり、結婚式場の司会業やイタリアンレストランのスーパーバイザーおよび、ホテル支配人や企業の取締役など多様な職種を経験。
ある時から、かつての同僚とラーメンを食べ歩くようになり、その奥深さに強い興味を抱く。次第にラーメンを作りたいと思うようになり、2007年に独立し「株式会社Dream Gate」を設立、自身のラーメン店『風雲児』を新宿にオープンする。
現在も厨房に立ち続ける傍ら、地元・愛媛県新居浜市のふるさと観光大使を務めるなど、その活躍は多岐にわたる。


店舗情報



〈住所〉
〒151-0053
東京都渋谷区代々木2-14-3 北斗第一ビル 1F

〈営業時間〉
11:00~15:00/17:00~21:00
日曜・祝日定休
※スープ売り切れ次第終了

〈公式HP〉
http://www.fu-unji.com

〈公式Twitter〉
https://twitter.com/fu_unji






老若男女、多くの人に食べてもらいたい、それが鶏白湯だった


ーなぜ鶏白湯スープにされようと、思われたのでしょうか?


お店を創業するにあたって、一番に考えたのがマニアックな味にはしたくないということです。というのは専門家に気に入られる味ではなく、普段ラーメンを食べないような方が仮に食べても美味しいと思ってもらえる、万人受けする味っていうものを追求したんです。

そう考えていたときに、前職の上司で豚骨の匂いが苦手な人がいたのを思い出したんです。豚骨独特の動物臭がだめだっていう。一緒に食事に行った時に「君らだけ食べてていいよ、外で待ってるから」ということがあり、その言葉が頭の片隅に焼きついていてたんです。

特にOLさんだったら、私服でランチ食べに来て匂いが染み付くのが嫌だっていう人は絶対にいるだろうなと、だからラーメン屋にこないっていうことになってしまうのかなと。

私自身は豚骨好きなんですけど、万人受けするということをコンセプトに掲げた時に、少しでも苦手な人がいるということを考慮して、鶏だったら幅広く受け入れられるんじゃないかと、動物系の食材の一つとして取り入れていった形ですね。

本当に普段食べないような方にも、男性だけでなく女性も年配の方にも幅広く喜んでもらえるということで、考えた結果が鶏だったんです。


一番美味しい瞬間を逃さないよう、真剣な眼差しで調理されています。




他にはない濃厚鶏白湯スープとつけ麺ブームで行列の絶えない人気店に


ー昨今、鶏白湯スープのラーメンが流行っていますが、「風雲児」創業当時は他にも同じような店はありましたか?


我々が創業した8年前の当時は、鶏白湯というのはほんと数える程度でした。それもドロドロのは一切なかったですね。あっても博多の水炊きのようなサラッとした濃度のスープがほとんどだったんですよね。

なぜかっていうと、豚骨などに比べて濾し方とか作業の工程が面倒だからだと思うんですよね。目の細かいシノワっていうもので、ガリガリこすりながら濾すんですけど、これだとなかなか水分が出てこないんです。

鶏の骨とか肉が目に詰まってしまって、スープが落ちてこないんですよね。それを何度も何度も濾すんですね。それがほんとに肉体労働で、スープがなかなか取れないという。

そういった手間が理由で、濃厚鶏白湯を作る人がいなかったんです。それをうちが手間をかけて提供したのが、ここ2〜3年の鶏白湯の流行要因だと思います。


一相当な手間と時間がかかるのではないでしょうか?


そうですね、全部で10時間ぐらいは炊き込んでいます。濾すだけでも4~5時間かかるほど手間がかかるんですよ。掃除もウルトラ大変ですからね。

丸鶏も入れていますが、原型がもちろんなくなるんですが、その原型がなくなった全部の食材を丁寧に濾していかないといけないんです。やってもやってもキリがなく汁がぽたぽた出てくるんで我慢比べですね。

でも、そこの最後の最後に一番美味しい旨みが濃縮された汁が出てくるわけじゃないですか。原型がなくなるまで煮込んで、細かい骨や肉を最後はおからみたいになるまで時間かけて濾すことで、化学調味料を一切入れないでも美味しいスープが出来上がります。




マイナーチャンジを繰り返し、常に進化することで行列を作り続ける「風雲児」


ー創業から8年、絶えず行列を作られている秘訣をお伺いできますでしょうか?


創業から8年目ですが、スープや麺のマイナーチェンジを10回以上やって今日に至っています。常連のお客様が「いつ来ても美味しいねー」といわれることがあります。その裏にはいつも味が同じではないという秘密があるんです。

常に進化させていくことで、常連の方がいつ来ても美味しいと言ってくれる味になる。まるっきり違う味ではないんですが、新鮮さを感じさせ、飽きさせない。行列ができている裏で、常に改革をし続け現状維持に甘んじない。

そういうことを続けていることが、結果としてお客様に受け入れてもらえている、要因なんじゃないかと思っています。




つけ麺のイメージがある中でのラーメン


ー評論家や常連の方からはラーメンの人気があるようですが?


創業時の注文割合は、ラーメン7割・つけ麺3割だったんですよ。券売機の左上がお店のおすすめだっていう。お店がメジャーになる前は、みんなその流れでラーメンを頼まれてました。それがいつの日か2年目ぐらいから、つけ麺が逆転しちゃいましたけどね。

つけ麺ブームっていう波もあったんでしょうけど。創業時はラーメンもつけ麺も美味しい、両刀使いの稀有なお店という紹介をいただいたりしたこともあって、そういうのも嬉しいですよね。

評論家と言われる方などは、つけ麺とラーメン一緒に食べられるんですが、「どっちをおすすめとして売ったほうがいいですかね?」と聞くと「ラーメン」って言われるんですよ。一般の方からすると「え?ラーメンなんてあったの?」みたいな(笑)


ー「風雲児」というとつけ麺をイメージされる方が多いですよね。


一般の方は8割がつけ麺を注文されるんですが、ラーメンの方は玄人受けがいいみたいです。 僕は8年間毎日ラーメン・つけ麺を交互に食べ続けているんですが、ラーメンは一般の方が食べられると、なんか物足りないような、どこにでもあるように感じてしまうのかなと思います。

なぜかっていうとパンチがないから。最近のラーメンのドロドロ系だとか、麺が極太だったり、パンチが過剰になってきているところがあると思うんですよね。一昔前だとドロドロ系って言われていたのが、今ではサラサラ系と言われたり。

やっぱりつけ麺だとガツンと来るので、多くのお客様のハートを掴む味になってるんだと思います。逆に評論家の方からすると、ラーメンの方が節系の味わいや深み、風味とかを感じられるんだと思います。だから、ラーメンしか召し上がらないお客様もいらっしゃいます。


緊張感のある開店前、お客様を待たせず提供できるよう準備がされています。


-鶏白湯スープ以外でもこだわりのポイントはありますでしょうか?


こだわりは出身が四国ということもあり、四国の麺といえば讃岐うどんですから、さぬきうどんの出汁をモチーフにした様なそういう製法で魚介出汁をとっております。

今は結構多いかも知れないですが、我々が創業した当初では珍しかった瀬戸内海産のウルメイワシを使っています。西日本では用いられることが多いですね。

あと麺が特徴ですよね。前職がイタリアンということもあり、イタリアンというとパスタですから、アルデンテな食感とさぬきうどんのようなコシをイメージして麺も作っているんです。


ー故郷である四国の要素を取り入れていらっしゃいますが、もしやスープの上に盛られた魚粉も…


そうですね、普通魚粉というと、どこのつけ麺のお店でも混合節と言って、いろんな節をミックスして魚粉にしています。そのほうが、味に深みが出ると言われるんですが、風雲児はというと、高知の花鰹を粉砕した粉を使用しています。

鰹と言うと四国。土佐の一本釣りというね。やはりそういう、一つ一つの素材は四国を意識して仕上げてます。じゃあ昆布は四国かというと、北海道産です。四国でより良い食材があればそれを取り入れていきます。



手間を惜しまず炊き上げた鶏白湯スープと、讃岐うどんのような魚介の出汁が見事に合わさった滋味深い味わいのラーメン。


最高の状態で提供していくために、風雲児は増やさない


-行列の絶えない風雲児、その2号店を他で出して欲しいといった声があるのではないでしょうか?


2号店・3号店は風雲児としては絶対出しません。なぜかというと、風雲児は商品だけではなく、接客や雰囲気など、他に支持されている部分がたくさんあり、それが風雲児の一つのブランド力になっているからです。そのブランド力を2号店3号店では出せないと思うんです。

会社という組織においては、部下は上司の命令に従いますよね。以前、飲食チェーンを展開している会社にいたとき、新しいお店を作って誰かに任せても、任された人間は自分の決断でやっていないので本気になれず、結局お店もダメになるという様を何度も見ました。

その様を見ていて分かったんです。本気の定義とは自分で決定すること、決断することですから、他人から強制・強要されてやるものではないと。だから私も誰かにやらせるようなことはしたくないと。


-これからもこの新宿の地だけでお客様にラーメンを提供していかれるのでしょうか?


そうですね。だから、私が死んだら変な話そこでおしまいということになりますね。

ただお金だけが目的なら、おいしい話はいっぱい来るんですよ。丼だけ持ってきてくれれば、券売機から内装まで気に入るようにやるからと。お金一切かからないんでね、おいしいといえばおいしいですけど、絶対にやらないですね。

そうなってくると、2号店3号店が潰れるだけじゃなくて、本店自体も足元をすくわれてしまって、風雲児のブランドに泥塗る形になってしまう。なので、これからもこの新宿で自分がイメージしたものを「風雲児」のスタイルでお客様に提供していきます。



〈編集後記〉


ラーメンにかける熱い想いや、お客様に対しての心配りを教えていただきました。これからも新宿で進化し続ける「風雲児」の一杯を、是非皆さんお店で堪能してみてはいかがでしょうか。

美味しい一杯を作るためには手間を惜しまない、そんな場面を思い浮かべながら食べると美味しさもひとしおですね。

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