辛辛魚を日本中に広めたい
ーこの度「第11回お取り寄せラーメン オブ・ザ・イヤー」にて、「辛辛魚つけめん」が見事につけ麺大賞を獲得されました。
まずは率直な感想をお伺いさせて下さい。
素直に嬉しいですね。
僕にとって、宅麺.comで販売している他のラーメン店は雲の上の存在だと思っていましたし、その中で大賞を受賞できたことは本当に驚いています。
また、お客様に選んでいただけたというのが何よりですよね。
僕らが納得した味を作れたとしても、それを美味しいと思ってくれる方がいらっしゃらないと、飲食業って成り立たないですよね。
だからこそ、僕らは毎日味を試行錯誤していますし、その結果お客様から評価してもらえたというのは本当に嬉しいですね。
ー2021年は年始から新型コロナウイルスによる自粛などを余儀なくされました。
麺処井の庄にとって、この1年はどんな年でしたか?
とにかく経験のない出来事の連続で色々と苦労したこともありました。
その中でも、お店を20時に閉めなければならなかったというのが心苦しかったですね。
それこそコロナが流行する前は、20時以降に来てくれていた常連さんもたくさんいらっしゃいました。
お客様の利便性を考えると20時以降もお店を開けていたいけど、20時以降は開けることができない。
その点はお客様に申し訳ない気持ちがありました。
ーそういった状況もあったからこそ、今回つけ麺大賞を獲得できたというのは特別な想いがあったと思います。
そうですね。
最初に宅麺に出店しようと思ったのも、お店に来られない人にも食べてほしいというところからスタートしています。
「麺処井の庄」は多店舗を展開している訳でもないですし、かといって本店の場所がアクセスが良いかというと決してそういう訳でもないと思います。
僕が店長に就任した時に、何とかこの味を日本中に広めることはできないかと色々探していました。
そんな時に宅麺.comに出会い、オーナー(麺処井の庄 中村オーナー)に相談したところ、いいんじゃないかと後押ししてくれたので出店に至りました。
ちなみに、うちのお店には、多い方で週3〜4回通ってくださる常連さんがいらっしゃいます。
ただ、僕らが知らないだけで、全国には愛してくださるお客様が他にもたくさんいらっしゃるのではないかとも考えられる訳ですよ。
宅麺ではそういったリピーターの方を増やしていき、これからも長く愛される味を追求し続けたいですね。1度は離れたラーメンの世界
ーそれでは、木村さんご自身のこれまでのご経歴を簡単に教えて下さい。
僕は元々、中華料理系のお店で修行してました。
ただ、当時流行っていたあるテレビ番組があったんですよ。
その番組に刺激を受ける形で、修行先のお店で新しいラーメンを開発するぞという話になったんですね。
それからというもの、毎日ラーメンを食べ歩いては、修行先のメンバー総出で味作りをして、豚骨醤油ラーメンのお店を開業しました。
そのお店は複数展開するまでに成長して、僕自身もそのお店で9〜10年ほど働いていました。
そこから1度はラーメンの世界から離れたのですが、他の仕事が全く合わなかったんですよね。
だからもう一度ラーメンの世界に戻ろうと思った時に、20代のころに衝撃を受けた「麺処 井の庄」の門を叩きました。
最初はアルバイトからスタートし、1つずつステップアップしていき、今では店長を任せてもらっています。
本当にありがたいですよね。
ーそれこそ、木村さんご自身もラーメン業界に入られてからかなりの年月が経たれたことだと思います。
ご自身のお店をオープンしたり、独立を考えたりということはなかったのでしょうか?
もちろん自分でお店を始めてみたいなという想いはありますよ。
色々と経験させてもらいましたから自分で試してみたいこともたくさんあるんですよね。
でも、うちのオーナーが自由な発想の人で僕と歳も近く、このままついて行きたいなとも思うんですよ。
これからもっと人気に火が点いたらこのお店はどうなるんだろうというワクワク感は常にありますし、井の庄の未来も本当に楽しみなんですよね。
これからも、井の庄に残って、さらに色々なチャレンジができたらと思っています。
ーついて行きたいと思える人がいるって素敵なことだと思います!記憶に残る「辛辛魚(からからうお)」というネーミング
ーここで、宅麺.comで提供をいただいている「辛辛魚つけめん」のこだわりや特徴を教えて下さい。
これは特徴になりますが、スープの粘度がとにかく高いところですね。
カレーやシチューのようにトロッとした舌触りがたまらないんですよ。
井の庄はスープが命であり、そのスープに強烈な中毒性がある独特の味わいだと思っています。
あとは、カレーのような粘度があるので、ラーメンやつけ麺だけではなく、ご飯にも合います。
常連さんにも、残ったスープにご飯をドボンしてニンニクを入れて、雑炊風に召し上がるという方も結構いらっしゃるんですよ。
それがまた好評で、お客さんご自身で様々な楽しみ方があるのも特徴的じゃないですかね。
ただ、そうやって色々と楽しんでいただけているのは、僕自身本当に嬉しいですね。
ー私も初めて食べた時は、トロッとした濃厚さには衝撃を覚えました!
ただ、辛辛魚つけめんは辛い魚粉が特徴的だなという印象を持っているのですが、辛魚粉についてのこだわりも教えて下さい。
魚粉は、辛くしようと思えばもっと辛くできるというのが正直なところなんですよね。
僕自身も唐辛子が好きなのでたくさん試してみましたが、今の辛魚粉はとにかく香りが抜群にいいんです。
あとはスープの旨味をしっかり感じられる程度の辛さなので、旨味や香りがしっかりと引き立つんですよね。
スープの旨味を感じられるように計算して唐辛子を使っているので、旨味と香りが計算されているというのは1つこだわりですね。
あとは香りの立たせ方です。
予めスープに魚粉を混ぜておくのではなくて、魚粉をお客様に崩してもらうことで、香りがさらに引き立つようになっているんですよね。
魚粉を崩すタイミングもお客様の楽しみの1つになっていると思いますし、ご自宅で楽しむ際も、ぜひ魚粉をスープに溶かすようにして香りの広がりを楽しんでいただきたいです!
ー味だけでなく、香りも楽しんでもらいたいというのは簡単にできることではないと思います。
それこそ、「辛辛魚」という独特のネーミングですが、この名前がつけられたのはどういった経緯があったのでしょうか?
実は僕もきっかけや意味をちゃんとは知らないんですよ。(笑)
バイトでここに入った時から、「辛辛魚(からからうお)」という名前はありましたし、深く考えたことがなかったですね。
でもこの名前をつけるまでに、相当試行錯誤を繰り返したというのはオーナーから聞いたことがあります。
僕も井の庄に入った当時は、どうやって読むかもよくわかっていなかったことがありましたし、お客様からもどうやって読むのかと問い合わせがあったこともありました。
独特な名前だからこそ記憶に残りやすいですし、気になる方も結構多いと思うんですよ。
そういった意味では、良く考えて付けられた名前だなと思いますね。大事だったのはタイミング
ーそれではここで、木村さんにキャリアについて質問します。
もし今から進路を選択する立場に戻れるとしたら、もう一度ラーメンの世界に入られますか?
わからないというのが答えになりますね。
僕はたまたまタイミングが重なったから、こうしてラーメンの世界に入りました。
元々食べることが好きだったので、もう一度進路を選択するとなった場合は、飲食の業界に入ると思います。
ただ、それがラーメンかと言われると、タイミングなので正直わかりまません...(笑)
それこそ、年齢を重ねるごとに食の好みって移り変わって行くと思うんですね。
僕自身も20代のころはラーメンを頻繁に食べていましたけど、今ではあまり食べなくなったとか。
なので、いつラーメンに出会ったかというのが、今考えても本当に大事でしたね。
これが30代の頃にラーメンに出会っていたりしたら、井の庄はおろか、ラーメンの世界にもいないと思いますし、だからタイミングが本当に一番大事だと思います。多店舗展開をこれからも夢見て
ー最後に今後の目標や展望を教えて下さい!
これは僕の夢ですが、東京駅のラーメンストリートに出店したいですね。
全国の名だたる名店が軒を連ねていますし、そこで肩を並べることができたら夢のようですよね。
その1つのステップが名古屋への出店でしたし、別の場所に店舗を展開することで課題も色々と見えてきました。
その課題を1つ1つクリアして、ステップアップしていくのがこれからの目標ですね。
ーなるほど。
多店舗展開というのは1つの大きな目標になっているんですね。
はい。
もっと多くの方に食べてもらいたいので、理想は複数展開できたら嬉しいですよね。
ただ、現実は難しいものがあります。
僕も作り方を教えに行ったりしましたが、作る人が変わるだけでかなり味が変わってしまうものなんですね。
それが大きな悩みの種で、このまま展開していくことに少し疑問を持つようになりました。
実際に本店の味と全く違うものを出してしまっては、麺処井の庄としてのブランドにも関わる問題なので、今後も展開するかというのは考え中ではありますよね。
ただ、これからも常にいい味を追求していきたいですし、末永く愛されるように研究や努力は継続していきたいです。
これからもたくさんの方に食べていただけたら、本当に嬉しい限りです。
ー木村さん、今回は貴重なお話をありがとうございました!
・プロフィール木村 成 店主
アルバイトから「麺処 井の庄」に入り、今では本店の店長を務める。
お店には毎日厨房に立ち続け、名物「辛辛魚」の味を守り続けている。