それぞれの想いが紡いだ一杯のラーメン
ー今年から開催した「Japan Best Ramen Awards」にて見事1位を獲得されました。
こちらの賞のコンセプトが「ラーメン店主が選ぶ本当に美味しいラーメン店」というもので、「飯田商店」の名前を挙げる店主さんが多く、この度見事1位に輝きました。
まずは率直な感想を教えてください。
率直な感想は非常に嬉しいです。
今回は同業の方から高評価をいただいたというのが何より嬉しかったですね。
またこうして賞をいただくとさらに気が抜けなくなります。
普段ももちろん全力を尽くしていますが、さらに突き詰めて行かなきゃなという想いが強くなりましたね。
ー2021年は様々な出来事がありました。
飯田さんにとって昨年はどのような1年でしたでしょうか?
今までと違ったことと言えば、有名な『TRYラーメン大賞』で殿堂入りをいただいたので、評価をしていただくという部分で自分自身ピリピリしなくなってリラックスしてできるのかなと考えていました。
ただ、実際は違いましたね。
今までもこれからもそうですが、常に美味しいものを作り続けたいと思ってやっているので、今までにも増してそういった気持ちが強くなったかもしれません。
まだまだやれることはありますし試すこともたくさんあるので、より良いラーメンへの追求は終わることはないでしょうね。
ー今のお話から日々より良い一杯を作りたいという想いを強く感じ取りました。
そこでぜひ飯田さんご自身のラーメン一杯に対する考え方を教えてください。
まず前提として、ラーメン一杯は僕の力だけでは成立しません。
ラーメン一杯を作るためには、たくさんの方が携わって出来ていますよね。
例えば、食材を作る生産者さんやその食材を流通させる業者さんなどがいるからこそ、僕もラーメンを作ることが出来ています。
それぞれが想いを持って携わってますし、最終的に作り手の僕の想いも乗せて一杯のラーメンが完成します。
そういった意味ではきっと、「想いの集合体」なんでしょうね。
僕はそのように考えています。日々勉強。そして発見の連続。
ー製麺室にはラーメンの鬼と呼ばれた佐野実氏の写真を掲げていたりと、飯田さんご自身は先人の作り上げてきた礎を大切にされていると思います。
その部分についてはどのように考えられているのでしょうか?
まず、僕らは勉強し続けなければいけないと思うんですよね。
次世代や後輩たちに技術を伝えていくには、同時に先輩方の歩んだ道や築いた礎を知ることが何より大切だと思っています。
先輩たちが製法やルートなど基盤を常に作り続けてくれたからこそ、今我々はこうしてラーメン屋をできているといっても過言ではないので、当たり前に今の状態があると思ってはいけないんですね。
そうしたことは常に自分に言い聞かせていますし、後輩や弟子たちにも伝えています。
先輩たちが何をやられてきたのかというのを常に勉強することはもちろん、目の前に存在する調理法などの技術が今この瞬間に生まれたものじゃないという視点を持つことは非常に大切だと思います。
ー先輩方の教えから様々なことを学び試されているからこそ、今のお店の味が確立されていることと思います。
それこそ、昨年2月にはお弟子さんのお店(Ramen Feel)がオープンし、今後は飯田さんが後継の育成という部分を担われていくのかなと思います。
まずは弟子が卒業し、オープン前から注目してもらって本当にありがたかったです。
これからも今いる弟子が独立できるように共に頑張っていきたいですよね。
また弟子ではないですが、後輩など色々と教えてほしいと言ってきてくれる方もいますので
積極的に情報交換をするようにしています。
もちろんお互いの勉強の場になりますし、交流やコミュニケーションを通してこれからのラーメンを考えていきたいなと思っています。
そう思いつつ後輩たちもどんどん成長してくるので、僕も負けてたまるかとさらに研究など重ねますし、そういった意味ではいい相乗効果をもたらしてくれてるんですよね。(笑)
僕が現場から退いて教えるというところに専念するのではなくて、僕自身も現役でみんなで上手になっていくというイメージですね。
僕自身毎日発見がありますし、まだまだ発見すべき技術は山ほどあるはずなんです。
常に勉強し続けるのはもちろんですが、常に発見がある世界でもあるので。
そういった発見を大切にしながら日々ラーメンに向き合っていきたいですね。お客様に寄り添い続けたい一心で
ーラーメン作りだけでなく、店内の清潔さや店内の雰囲気など、居心地の良い空間づくりも非常に大切にされている印象があります。
まず我々はラーメン職人であり料理人でもあるのですが、その前に商売人であるということを肝に銘ずるべきだと思います。
お客様からお金をいただこうとしている時点で、それ相応のおもてなしは必要ですよね。
当たり前のことですが、「いらっしゃいませ。」「ありがとうございました。」などの挨拶を僕はちゃんとしたいんですよね。
また、店内を綺麗にすることも当たり前のことだと思います。
もちろん業態によっては飛び散ってしまったりすることなどがあると思いますし、活気の
ある雰囲気はラーメン店なのであって良いと思うんですよね。
でも、カウンターが綺麗にされているとか、換気扇が掃除されているとか、それはもうやれることなので。
店内を綺麗に保ったり、挨拶をするなどラーメンやお客様に向き合う姿勢は、ラーメン作りにも全て繋がっていると僕は考えていますよ。
ーお客様を大切に謙虚にラーメンに向き合っているからこそ、多くの方から愛されるお店を実現できていると思います。
お店では予約制も導入されていて、ますますお店で食べることも難しくなっている中、大手コンビニや飲食店とのコラボレーションが私自身印象的でした。
他社さんとのコラボレーションに関しては、ありがたいことに色々な会社の方からお話をいただいています。
僕自身が作ることができるラーメンにはどうしても限界がありますが、本当に幸せなことにその何倍ものお客様が食べたいと思ってくれているという現実を知った時に、素直にチャレンジしてみたいなと思ったんですよね。
最初はまずやってみようという気持ちが強かったんですが、やってみた結果として僕が気づいたことは全く違いましたね。
ーその心は...?
例えば商品を開発したり、手直しする時ですね。
僕の持っている技術は基本的に全てお伝えして、商品をブラッシュアップしてもらうようにしています。
そういった工程を重ねて商品が完成した時に、僕がお伝えした技術を他の商品にも使いたいと言われることがあるんですね。
僕はそういう依頼は快諾しています。
というのも、僕がお伝えした技術や製法を応用した商品が全国のお店やご家庭の食卓に並んでるかもしれないって考えると、本当に素敵なことですし嬉しいですよね。
そこに自分の名前が載ってようがなかろうが、幸せなことだと思ってます。
僕自身そういったことに喜びや快感を覚えるようになってきているなというのが、1つの新しい気づきでしたね。(笑)ラーメン店主の道はもう一度歩まないかもしれない。
ーそれではここで変わった角度から質問させていただきます。
もし飯田さんご自身がこれから進路を選択する立場に立ったとしたら、こうしてもう一度ラーメン店主やラーメン業界の道を歩まれますか?
え、面白い質問!
どういうこと?(笑)
ラーメン店主をしていたという記憶が無くなったらということかな?
それとも、記憶も何もかも真っさらな状態でということ?
ーぜひ両方お聞かせください!
そうだなぁ〜。
記憶がない状態でもう一度進路を選ぶ立場に戻ったら、ラーメン店主を選ぶと思います。
でも、記憶があるなら絶対に選ばないかな。(笑)
絶対に選ばないというのは、別に嫌だとかそういう訳ではなくて、ラーメンを通して培った技術や経験を、他の業種に活かした時に、果たして自分はどんな判断の仕方をするんだろうなというところにとても興味がありますね。
でも、難しいですね。
いざそうなってみないと、本当にわからないです。(笑)ラーメンが作り出す人と人の大きな輪
ーそれでは最後に、飯田さんご自身の今後の展望を教えてください。
2つあって、1つは今は言わないです。
でもそれは必ず実現するので、ぜひ楽しみにしていてください。
もう1つは、貧困などで経済的に恵まれていなかったり、そういったことが理由でラーメンを知らないといった子供たちがいるところに行って、お店を開いたりするなど、ラーメンを通して雇用の機会などを作りたいですね。
もちろん、上から物を言ったりするのではなくて、”ラーメン”というものを知って好きになってもらいたいというのが1番の願いですね。
具体的ではないですけど、漠然とそういったことを夢見ています。
でも、考えてみてください。
例えば異国に弟子が1人いるなんてすごい素敵なことじゃないですか。
その人が、さらに別の人にラーメン作りを教えて、そうやってどんどん輪が広がっていくとさらに雇用の機会が生まれたりすると思います。
僕はラーメンにはそれができるだけの価値があると思っていますし、人を幸せにする力を持っていると思っています。
もちろんラーメンだけではないですが、ラーメンは特にその力があると信じています。
ーラーメンを通して広がる「輪」は本当に強い繋がりだと思いますし、関わる人を幸せにする力があると思います。
私自身も実現する日、そして異国で活躍される飯田さんのお姿もお目にかかれたら嬉しいです!
飯田さん、本日は貴重なお話をありがとうございました!
・プロフィール飯田 将太 店主
今や全国的知名度を誇る「らぁ麺 飯田商店」を手掛ける。
ラーメンに向き合う姿勢や想いなどは同業の店主からも一目置かれ、数々の人々を惹きつけて止まない存在である。